雇用促進税制の創設

2011年6月22日 by seiwa

平成23年度税制改正案は、現在2つの法案に分かれ、そのうちの1つ「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」(以下「改正法律案」)が平成23年6月10日に提出され、6月末までに成立の見込みです。
今回は、新たに創設される予定の「雇用者の数が増加した場合の特別税額控除制度」の規定を紹介したいと思います。

 この規定は、文字通り、新たに雇用者を雇い入れた場合等に一定額を法人税額から控除できる規定ですが、控除を受けるためには一定の要件が必要です。

まず、当該規定の内容を改正法律案要綱から抜粋します。
青色申告を提出する事業者で当期及び前期において離職者がいないことにつき証明がされたものが、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度のうち、基準雇用者数が5人以上(中小企業者等については、2人以上)及び基準雇用者割合が100分の10以上であることにつき証明がされ、かつ、給与等支給額が比較給与等支給額以上である事業年度において一定の事業を行っている場合には、20万円に基準雇用者数を乗じて計算した金額の特別税額控除ができることとされています。ただし、当期の税額の100分の10(中小企業者等については、100分の20)相当額を限度とされます(租税特別措置法第42条の12関係)。

この規定につき、少し要件を見ていきます。
①当期及び前期において離職者がいないことにつき証明がされたもの
 事業主都合による離職がないことにつき、ハローワークでの確認が必要です。
 これは、事業主都合により意図的に従業員数を減らすような行為を防止する趣旨です。

②基準雇用者数≧5人(2人)
 当該事業年度末の雇用者数-前事業年度末の雇用者数≧5人(2人)

③基準雇用者割合≧10%
 基準雇用者数/前事業年度末の雇用者数≧10%

④給与等支給額が比較給与等支給額以上
 給与等支給額≧前事業年度の給与等支給額+前事業年度の給与等支給額×基準雇用者割合×30%
 つまり、
 給与増加額≧前事業年度の給与等支給額×基準雇用者割合×30%
 これは雇用者数だけを増やして、給与額を下げることを防止し、「雇用の質」を維持するための趣旨です。

これから人材投資をお考えの企業様にとっては有効な節税効果が期待できそうですが、控除を受けるために事前にハローワークへの届出が必要だったりと、事前に準備が必要ですのでご留意ください。
なお、個人事業主についても、同様の規定が盛り込まれる予定です(租税特別措置法第10条の6関係)。