二世帯住宅に係る小規模宅地等の特例の適用について

2011年11月25日 by seiwa

最近では、二世帯住宅を建てて親子で住んでいる方も多くいらっしゃるかと思います。そこで、今回は以下のケースで相続が発生した場合の小規模宅地等(特定居住用宅地等)の適用(措法69の4)について検討したいと思います。

前提
・土地所有者は親(被相続人)
・住居はそれぞれが住んでいる部分を所有(親は単身暮らし。配偶者及び同居親族なし)
・親と子(相続人)は生計一ではない

ケース1(土地の上に2棟の住宅を建て、親と子がそれぞれの住宅に住んでいる場合)
本ケースは、親(被相続人)が比較的広い土地を所有しており、子(相続人)はその余っているスペースに別棟として自分の住宅を建てて住んでいるケースを想定します。

この場合に小規模宅地等の適用の有無を検討していきたいですが、まず、最初に特定居住用宅地等の要件について見ていきたいと思います。その要件は3つあり、①被相続人と同居していた親族で相続開始時から申告期限まで引き続きその家屋に居住し(居住継続要件)、かつ、その宅地等を有していること(保有継続要件)②被相続人と同居していない親族で被相続人の配偶者や同居していた一定の親族がいない場合において、3年以内に日本国内の自己又は自己の配偶者の所有する家屋に居住したことがなく、かつ、保有継続要件を満たしていること③被相続人と生計を一にしていた親族の居住の用に供されていた宅地等で当該親族が居住継続要件及び保有継続要件を満たしていること、のいずれか1つを満たせばよいことになっています(措法69の4③二、措令40の2)。

本ケースでは、子(相続人)は親(被相続人)とは同居しておらず、生計も一にしていないため、まず上記要件である①及び③の要件は満たしません。また、子(相続人)は自分が住んでいる住宅を所有しているため②の要件も満たしません。したがって、ケース1の場合には、小規模宅地等の適用(80%減額)はできないこととなります。

ケース2(土地の上に1棟の住宅を建て、親と子が区分所有して住んでいる場合)
本ケースは、都市部などの比較的土地が狭い場合に、親と子が1棟の住宅を建てて、1階部分は親世帯、2階部分は子世帯とし、プライバーの確保等により玄関は別で、建物内部での行き来ができないケースを想定します。

本ケースも、一見ケース1と同様と考えられ、特定居住用宅地等の要件を満たさないように見受けられます。しかし、措通69の4-21なお書きにおいて、(1)被相続人の居住に係る共同住宅の全部を被相続人又は被相続人の親族が所有(区分所有や共有問わず)していること(2)相続開始の直前において被相続人の居住の用に供していた独立部分以外の独立部分に居住していた(3)被相続人の配偶者又は被相続人の居住の用に供していた独立部分に共に起居していた被相続人の親族(相続人)がいないこと(4)適用を受ける親族が、被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた者に当たる者であるものとして申告があったとき、のすべての要件を満たし、その適用を受ける親族が居住継続要件及び保有継続要件を満たしていれば、前述の特定居住用宅地等の要件の1つである①に該当するものとして取扱われます。

したがって、ケース2の場合には、(1)から(3)までの要件は満たしているため、あと(4)の申告と居住継続要件及び保有継続要件を満たせば、小規模宅地等の適用対象(80%減額)になるものと思料します。

ケース1とケース2ではライフスタイルとしてはそれほど変わりはないと思いますが、相続税の取扱いに差が生じてしまうため、二世帯住宅等を検討する場合には、ぜひ留意していただきたいと思います。